9月10日に権藤優希先生の新刊『心が強い人のシンプルな法則』(きずな出版刊)が発売になりました。
それに先立ち、8月30日に「発売前出版記念イベント」を開催。
著者の権藤先生と、本書の担当編集者きずな出版の小寺裕樹のトークライブの様子をご紹介します。
(以下、権藤:権藤優希先生 小寺:小寺裕樹)
~心が折れるのを乗り越えて、メンタルは強くなる~
小寺:
本日はよろしくお願いします!
早速ですが、今回なぜメンタルをテーマに本を書こうと思われたんですか?
権藤:
昨年、『自分で決める。』(きずな出版刊)という本を出して、仕事においてもプライベートにおいても、意思決定の基準とスピードが大事だと伝えました。
ただ、読者の方から、日々の環境に流されて、自分で決めづらい状況があるという声をたくさんいただいたんです。
確かに、仕事や人間関係で心が折れて、決められなくなる場面はたくさんあると思ったので、そんな皆さんの日常に活かせそうな話を、僕の実体験をもとにお伝えできればと、今回このテーマを選びました。
この本には、リアルなエピソードをたくさん盛り込んでいます。
小寺:
いまでこそ多岐に渡る事業をされていて、メンタルがすごく強い印象の権藤先生ですが、もともとメンタルが強いほうではなかったんですよね?
権藤:
はい。もともと弱くて、そこから克服して現在強くなったというビフォーアフターがあるから、この本を書きました。
僕は、大学を卒業してからNECという大手企業で働いていましたが、起業する25歳まではメンタルが弱くて自信のない人間でした。
起業して、すべての責任を自分でとっていくしかなくなった中で、ビジネスのメンターである実業家の嶋村吉洋さんとの出会いなどを経て、メンタルが強くなっていきました。
嶋村さんは、現在も経営塾である嶋村塾で数々のビジネスをサポートされ、特に若手起業家の育成に尽力されています。
起業って、最初からメンタルが強くて、人間関係構築も上手で、お金もノウハウも持っている人がするイメージではありませんか?
僕は、そのすべてを持っていませんでした。
でも、そんな自分を後天的な努力で変えてきたからこそ、それをウリにしたこの本をつくることができたんです。
小寺:
そこが魅力的なんですよね。
本の帯にも書かせてもらいましたが、「大切なのは心が折れないことではない。折れてから回復するまでのスピードだ」と。
権藤先生も、心が折れる経験をたくさんされているんですよね。
権藤:
100回心が折れては、100回立ち直る、これの繰り返しですね。
強いメンタルをつくるための公式は、「心が折れた経験×乗り越えた経験」なんです。
それが、今回の「シンプルな法則」というタイトルになっています。
~行動が先。場数を踏むことで自信が生まれる~
小寺:
今日は本の内容から重要な箇所を少しピックアップして、自ら解説していただこうと思っています。
まずこの本の考え方が凝縮されている、「無限に死なないマリオになれ」という話について、詳しく教えていただけますか?
権藤:
はい、名作ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」の話を引用した箇所ですね。
そう、マリオに限らず、ゲームが上達するためには“場数”が必要じゃないですか。失敗せずにクリアすることはありえない。人生もそれと同じなのです。
ゲームを始めれば、最初は何が起こるかわからないから失敗する。
でも、失敗しても、凹んでしまって、もうそのゲームができなくなるってことはないですよね。
クリアという明確な目標があるので、「こうやったら失敗するんだ。
どうすればクリアできるだろう」と思うだけのはずです。
そうして、「こうやったら失敗する」を習得し続けることで成功します。
そして、マリオでいうと「1-1」ステージをクリアできるようになったら、同じステージを繰り返して満足する人はいないですよね。
必ず次の「1-2」ステージに行きたくなります。
つまり人間は本来、現状維持はイヤで、失敗というリスクを抱えながらも、チャレンジしたいという生き物なんですよ。
チャレンジし続けることで、失敗して心が折れる経験と、それを乗り越える経験がセットになり、メンタルが強くなっていきます。
小寺:
マリオに例えるのは、すごくわかりやすいですよね。でも本当に、場数が大切ですよね。
権藤:
場数を踏むと言えば、僕は過去に、1日45件のアポをこなすという経験をしたことがあります。
小寺:
1日45件!それ、可能なんですか?
権藤:
じつは可能なんですよ。
朝9時から日付が変わる24時まで、20分おきに人に会えば、45件になります。
小寺:
やばい(笑)。
単純な疑問なんですけど、それって、ご飯とかトイレはどうしたんですか?
権藤:
「ここで行く」と決めていたら、2分前に商談が終わります。
1分あればオニギリを食べられますし、決めていたら2分で用もたせます!(笑)。
小寺:
すべて決めて達成するんですね(笑)。
権藤:
普通、1日に3~4件のアポをこなすだけでも、メンタルがすり減りますよね。
ただ、次に会う人にとって、僕のそのときのメンタル状態は関係ないんですよ。
45件の中には、うまくいかない商談もあったし、断られることもありました。
ネガティブなことを言われて凹むこともありましたが、次会う人には関係ないので、15秒で切り替えるしかないんですよね。
それをこなして思ったのは、もともとメンタルが強くて仕事のクオリティが上がるのではなく、場数を踏んで、切り替えざるを得ない状況になればメンタルは強くなるんだなということです。
それを経験できたのが大きかったです。
小寺:
時間が空いていると、あれこれ考えてしまいますもんね。
権藤:
一人で考えると、どんどんネガティブな感情になるので、切り替えながら進むことが大事です。
僕は、この1日45件アポというのを人生の中で10回くらい経験しているのですが、これをやっている時期は、「誰でも来い」という感じになれていました。
これだけの商談をしてクロージングもできているんだったら、どんな相手でも決められるという自信がついていました。
行動が先で、自信が後なんです。
自信がついてから行動しようというのは違います。
行動を重ねることで、いまの自分は無敵だなという感覚に、途中からなっていくというのが、僕の実体験の順番です。
~客観的かつ強制的な仕組みをつくって、自分を律する~
小寺:
でも、日々生きている中では、嫌なことが起きたり邪魔されたりすることがあるじゃないですか。
それでもブレない自分でいるために、権藤先生が取り組まれていることはありますか?
権藤:
紙に書くようにしています。
嫌なことも、書くと意外に大したことないと気付くんですよ。
メンタルがブレたり落ち込んだりしたときは、何に悩んでいるのか、今日1日どうして嫌な気分がしたのか、その原因を書いてみるんですよ。
そうしたらたいてい、大したことないなと思えます。
メンタルのネガティブが連鎖して、グレーのフィルターがかかった1日を過ごしてしまっているだけで、事実としては大したことないというのが現実です。
書くことでそれが見えてくるので、「これとこれを解決するだけ」と切り替えることができます。
小寺:
なるほど。
権藤:
また、僕は目標達成のTo Do リストの中から、毎朝「今日は寝るまでに何があってもこれをやるぞ!」というものを書いています。
急なスケジュールにも絶対邪魔されないぞと決めて、達成することがその日のゴールなので、達成したら飲みに行きますが、達成していなければ誘われても行かないです。
いまはスケジュールを崩されない努力をしないと、テレビやSNS、YouTubeなど、いろいろな情報が舞い込んでくるので自分の時間を過ごすのが難しくなっているんです。
だから、自分で決めたことを守っていくのをメモと共に常に意識しておかないと、僕みたいに普通の人間が目標を達成するのは難しいかなと思って、そうしています。
小寺:
そういう「強制的に仕組みをつくっていく」のがうまいですよね。
ほかにも大事にしている仕組みってありますか?
権藤:
ブレないためには、学ぶ人を一人に決めるのも大事です。
最近は、他人の活躍をSNSを通して簡単に見ることができますので、我々はいろんな人に憧れやす状況になっています。
でも、ついていく人を決めておかないと、さまざまな角度から影響を受けすぎて、結局なにをすればわからないという状態に陥る人が多いです。僕は、メンター以外からのアドバイスは、本当にキレイに右から左に受け流しています。
~失敗を笑い飛ばしてくれる相手と一緒にいる~
小寺:
本の中では、「死にたくなるほどのミスも、誰かに笑い飛ばしてもらう」と書かれていて、おもしろい発想だと思ったのですが、どうしてこう思うようになったのですか?
権藤:
僕には会社員をしながら起業準備をしていた時期があったのですが、毎日会社が終わってから夜中まで起業準備をする生活を繰り返していたら、あるとき2日連続で寝坊をして、会社に大遅刻をしてしまったんです。1日目はすぐに上司に電話して出勤したんですが、2日目はさすがに行けなくて……会社を辞めて、死のうと思いましたね(笑)。
それで、メンターのところに泣きつきに行きました。
慰めたり、何かいい話をして僕の気持ちを盛り上げたりしてくれるんだろうと期待して行ったんですけど、そのときメンターは、「ガハハ~!」と大笑いしたんですよ。
そしてなぜか、「一緒にトランプをやろう」と(笑)。
小寺:
意味わからないですね(笑)。
権藤:
でも、笑いながらトランプをしていたら、心が軽くなったんです。
何が言いたいかと言うと、これから何かに挑戦する人は、一緒にいる人が大事だということです。
会社で凹んでも、起業の仲間やメンターに会ったら復活して、一人になったらまた凹むけれど、メンターに会ったらまた復活して……これの繰り返しなので。
僕も決して一定していたわけではありません。
だからこそ、笑い飛ばしてくれる人がいることが重要なのです。
小寺:
確かに、理路整然と説明してくれる人もありがたいですが、気持ちを盛り上げてくれる人を身近に置いておくのも大事ですよね。
~ネガティブ発言を気にするのは無駄~
小寺:
起業するときに、まわりからネガティブなことを言われる人って多いと思いますが、権藤先生にもそんな経験ありますか?
権藤:
もちろんありますよ。
もともとメンタルの弱かった25年間の僕を見たら、起業できる要素なんてゼロです。
そんな状態でビジネスを始めたので、会社の上司や友達、親などにいろいろ言われました。
「お前には無理」とか「洗脳されてるんじゃないか」とか。
一番ムカついたのは「お前が成功したら俺もやるわ」と言われたことですね。
小寺:
あ~。それはムカつきますね。
権藤:
起業するとき、元いた会社の10人に「一緒にやろう」と声をかけたんですけど、来てくれたのは1人だけでした。
あとの9人にはバカにしたようなことを言われて、悔しかったので、僕はそれを全部メモに取ったんです。
「社会人3年目の世間知らずに、こんなビジネスできるわけない」とか、「お前の能力ではうまくいかない」とか。
全部書いたらワナワナしてきました(笑)。
その当時はまだメンタルが弱くて、土日になると休みたかったり遊びたかったりする気持ちがありましたが、そのメモを書いた「復讐リスト」というノートを、僕はいつも枕元に置いて、朝それを見て気持ちを奮い立たせていたんです。
「ここで世の中の普通の人と同じ行動をしていたのでは、コイツらの言った通りになってしまう。それだけは許されない!」という怒りをパワーに変えてがんばりました。
小寺:
怒りパワーは強いですよね、僕も日々怒っています(笑)。
権藤先生は一見そういうのはなさそうなのに、驚きです。その復讐ノートはいまでもつけているんですか?
権藤:
じつは、起業してうまくいき始めたときに、そのとき断ってきた全員に会って、圧倒的な結果を見せつけてやったんですよ。
前の会社の正門にベンツをつけて、「よっ!」って(笑)。
小寺:
おー!闇が深い!(笑)
権藤:
ま、警備員さんに「すぐにどいてください」って言われたんですけどね(笑)。
そうやって復讐リストの9人に復讐してみた結果わかったのは、9人とも、自分の言ったことをまったく覚えていないということです。
「俺が成功したらお前やるって言ったよな」と言っても、「俺そんなこと言ったっけ?」みたいな。
要するに、凹むようなことを言われても、それに捉われていちいち気にしているのは、自分だけなんです。
相手は覚えていないのに、それに流されてメンタルを折ること自体が無駄だなと思いました。
小寺:
それは真理かもしれないですね。
人はたいてい、人から言われたことでしか凹みませんが、相手は覚えていないんですよね。
~デジタル時代だからこそ、アナログのつながりを大切に~
小寺:
今回の本では、現実の厳しさについても正直に書かれているところがいいな、と僕は思っているんですけど、意識的にそうされたんですか?
権藤:
最近は、好きなことややりたいことだけやればいいみたいな謳い文句を掲げている人が増えていますが、そう言っている人も、成功している人はみんなよくよく聞けば、実際は泥臭いことをいっぱいやっているんですよね。
見栄えのいいそのワードを、世間が受け取りやすいから言っているだけで、裏にはドロドロとした汗をかいてきた経験があるんです。
僕も、僕みたいな普通の人間が成功するためにはハードワークしかないと思って、泥臭くやってきました。
だから、泥臭く働いて、うまくいかないことも乗り越える経験をして、その中で自分が成長していく過程を踏んだ結果、欲しいものが得られるということを正直に伝えたいと思っています。
小寺:
そうですよね。
そこを間違えて受け取ってしまうと、楽をすればいいみたいな文脈になってしまいますよね。
権藤:
あと、このIT時代において、デジタルツールももちろん必要なのですが、アナログなつながりも大事だと思っています。
結局、デジタル社会の中でも、うまく収益をあげている人は、アナログにコアなファンがいる人なんですよ。
SNSに10万人のフォロワーがいても、リアルイベントで3~4人しか集められなかったら意味がない。
人の心はデジタルでは動きません。
人の心を動かすのにマニュアルもありません。
人に会いまくって、現場感でその人の心が動く瞬間を自分で見つけて、そのときその人に合った回答を出すのは、アナログでしかないんです。
だから、アナログを大事にして、人と人とがきちんとつながっていかないといけません。
コミュニケーションはデジタルだけだと限界があると思います。
小寺:
僕も編集者なので著者のSNSをチェックしますが、じつは「フォロワー数」よりも「つながり」を見ていますね。
フォロワーが少なくてもつながりが強いか、リアルでどのくらい人を動かせるのかを意識的に見ています。
~強いメンタルを手に入れたいすべての人へ~
小寺:
最後に、著者としてこの本を、どんな人に読んでもらいたいですか?
権藤:
がんばりたいけれど自信がない人や、がんばりたいけれどどう行動していいかわからない人などに読んでもらいたいですね。
僕自身、もともと強靭なメンタルを持っていたわけではないので、現状くすぶっていて打開策を探している人の役に立つと思います。
小寺:
この本は、ダメだったときのエピソードをさらけ出し、努力はしないといけないよと正直に言ってくれているところが、おすすめです。
再現性が高く、誰でも心を強くできるということを誠実に語ってくれている本なので、皆さま手に取って、いろんな人に勧めていただきたいです!
本日は、楽しいお話をありがとうございました!
構成:向井雅代(小寺メディア戦略室)